到達率SS・接客Fのメール専門サービス、MXrouteとは?

G Suite Legacy廃止で移転先を探している人も少なくないのではと思います。
5ちゃんねるやRedditで時々目にする「MXroute」はどういうサービスなのか、試しに導入してみました。

目次

TL;DR

MXrouteは非常に高い送達率のメールボックス提供に特化したサービスです。
ほぼ個人によって運営されていますが、個人・中小企業がメールボックスに求める機能はほぼ全て搭載されており、個人的にはサーバの安定性も高いと思います。
ただし、懇切丁寧なサポートは期待してはいけません。質問したら「まずマニュアルを100回音読しろ」と言われること請け合いです。サポートに割くコストを極限まで削り、価格を抑えているようです。

こんな人におすすめ😀

  • 相手に確実に届くメールボックスを使いたい
  • GAFAMは使いたくない
  • ドメインやメールアカウントは定額で無制限に設定したい
  • 自分のドメインを持っている
  • 英語のマニュアルを読める
  • 鯖落ち以外の設定トラブルにはだいたい自分で対処できる
  • メールボックスがあれば、カレンダーやアドレス帳はおまけで良い
  • 万が一、サービスが潰れてもなんとかなる

こんな人にはおすすめしません😥

  • 上記を一つでも満たさない人

MXrouteとは?

https://mxroute.com/
アメリカのテキサス州の小規模な企業(日本でいう合同会社)が運営する、メールボックス専門のウェブサービスです。
低価格帯かつ高いメール到達率を重視しており、実際この価格帯では突出したIPレピュテーションとサーバ安定性を誇ります。

何故メール到達率が重要なのか?

メールを送ったら何故かエラーで送り返されてきたり、「迷惑メールフォルダに入ってました💦」と言われた事はないでしょうか。
日本のプロバイダメールやキャリアメール、GmailやYahoo!メールなどでは殆ど意識されることはありませんが、メールが送り先に到達できるかどうかは「送信元のサーバが信用されているかどうか(IPレピュテーション)」が非常に重要です。
IPレピュテーションはIPアドレス単位での「サーバの評判」で、迷惑メールを送信するなどの行為で低下し、下がりすぎると他のメールサーバがメールを受け付けなくなります。(詳細:IPレピュテーションとは? | SendGridブログ
低価格帯のメールボックスやレンタルサーバは迷惑メール送信業者の踏み台になりやすく、これらのサービスはひとつのIPアドレスを数十~数百アカウントで共有しているため、ひとつのアカウントが原因で起きたIPレピュテーションの低下は同居する多数のアカウントに影響を及ぼします。
MXrouteは、低価格帯で高いメール到達率を達成することを目標としたサービスであり、IPレピュテーションの維持に多くのエフォートを割いています。

MXrouteの特徴

メール絶対届けるマン

MXrouteは高いメール到達率を売りにしています。割り当てられるのは共有IPではありますが、IPレピュテーションが低くなり受け取りを拒否された場合は即座に別のIPに切り替えられ、自動的に再送されます。

メール周りの必要な機能がほぼ揃っている(マーケティング用途を除く)

通常のメール送受信(SMTP, IMAP, POP3)とメール到達率向上に欠かせないDKIM・SPFはもちろん、自動転送や自動返信、休暇中メッセージ、キャッチオールアドレス、送受信履歴の確認など、格安メールボックスでは一部足りなかったりする機能も一通り揃っています。
セキュリティを向上させるための二段階認証や質問認証、SSL (Let’s Encrypt) も備えています。
スパムフィルタ(rspamd)は独自のものを構築しており、これはGitHubで公開されています。
対して、画像リンクによる開封追跡やリンククリック監視などのマーケティング関連機能は備えていません。DMARC解析ツールもありませんが、大企業でないかぎりそこまでは必要にならないでしょう。

Webメールのアプリケーションも複数揃えています。カレンダーや連絡先の管理もできる(CalDAV, CardDAV)Afterlogic Proや、webブラウザに加えてAndroidやiOSでも同様のインターフェースで使えるCrossboxなどのリッチなアプリから、定番のRoundcubeやRainloopも利用可能です。
加えて、契約容量内でNextcloudなどのストレージ機能を備えたグループウェアも使えます。

使えるアプリ(2022年3月時点、当サイト調べ)

  • Webメール
    • Afterlogic Pro
    • Crossbox
    • Rainloop
    • Roundcube
    • Snappy
    • SquirrelMail
  • グループウェア
    • NextCloud
    • Mattermost
    • Horde

料金はストレージ容量だけで決まる

MXrouteの料金体系は、ストレージ容量だけで決まります。他の機能は全プラン共通です。
(表は1USD=120JPY換算、Lifetime Promoは数量限定)

プランSmallMediumLargeLifetime Promo
ストレージ容量10GB25GB50GB10GB
ドメイン登録数無制限無制限無制限無制限
メールアカウント数無制限無制限無制限無制限
料金$45/year
(年間5,400円)
$55/year
(年間6,600円)
$65/year
(年間7,800円)
$175/once
(21,000円買い切り)

国内の格安メールボックスサービスが年額1,000円程度で使えるのに比べると、割高です。
参考:【最新】メール専用のレンタルサーバー7社徹底比較【ビジネス・個人】 – メールサーバーNAVI
なお、メールは1アカウント毎に、1時間あたり300通送信することができます。

サポートは「まずマニュアル読め」

実質1-2人で運営しているサービスなので、丁寧なサポートは期待できません。
まずは送られてくる英語メールを熟読し、英語マニュアルも熟読することを要請されます。
なお、マニュアルの文体はかなりアグレッシブで、人によっては「客を馬鹿にしている」と感じうるかもしれません。GDPR準拠の要求に対しては「何でそんな高圧的なんだ?米国企業なのにEUの基準に従う理由があるのか?自国の法律で外国を従わせたかったら条約結ぶか派兵するかしかないぞ」と一蹴しています。
メールの返答も口調は丁寧とは言えず、英語圏でも「無礼すぎんか?」とスレッドが立つくらいです。
MXRoute? Are they rude on purpose? What’s been your experience with them? : webhosting
これは運営者のキャラもさながら、クレーマー避けのために敢えてやっているとのことです。対処そのものはちゃんとやってくれます。

運営は実質的に1-2人

MXrouteのフルタイム従業員は1人だけです。運営は数人で行われていますが、大企業運営のサービスが数百人規模で行われている事を考えると不安に感じる人もいるかも知れません。
いまのところ、サーバ運営は極めて安定しているように思います。メールが届かない・Webインターフェースにつながらない事はまだ経験していません。
ただ、交通事故なんかで中心人物が動けなくなったとき、運営がどうなるのか…というのは非常に気にかかるところです。
万が一そのような状態になったとき、直ぐに乗り換えられる方が良いのかも知れません。

迷惑メールを送っても踏み台にされてもBANされる

IPレピュテーションを超重視しているサービスなので、迷惑メールを送信しているとみなされると当然ながら契約解除されます。
また、IDやパスワードなどログイン情報もユーザーに管理責任が課せられています。パスワードが漏洩したり、簡単なパスワードを使っていたために不正ログインされて迷惑メール送信の踏み台にされても、契約解除される可能性があります。

実際にMXrouteを使ってみた

MXrouteにアクセスします。

ページを下にスクロールすると”Plans&Pricing”欄が出てくるので、目的のプランの[Get Started]をクリックして購入画面に遷移します。
なお、執筆時点では数量限定のLifetime Promoもまだ購入可能でした。トップページの[ LIFETIME PROMO! ]から購入画面に遷移できます。

ドメイン情報を入力

プランを選択し、Hostnameには自分がMXrouteで使いたいドメイン(サブドメイン)を指定します。
当然ですが、自分で管理しているドメインを指定する必要があります。適当なドメイン名でも契約できますが、実際にメールを送受信するためにはドメイン設定が必要です。
ここで入力したドメイン名は初期設定とユーザー名決定に利用されますが、初期設定を削除して全く別のドメインだけ設定しても全く問題はありません。

「無料トライアルや返金は受け付けていない事を了解する」「送られてくるメールの『重要事項』を必ず読む」の両方にチェックを入れて、次の画面へ進みます。

支払い情報を入力

PayPal, Stripe Checkout, Coinbase Commerceの3つが支払い方法として選べます。
殆どの人はPayPal支払いを選ぶことになるかと思います。
“Client Information”に記載するメールアドレスには大事な情報が送られてくるので、必ず届くメールアドレスをミスなく入力してください。

購入完了したあとのメールを読む

“[MXroute] Important Account Information”という件名のメールが届くので、それを最初から最後まで熟読してください。
もう一度言いますが、最後まで、最後のFAQまでちゃんと読んで下さい。
MXrouteの世界へようこそ!マニュアル嫁!ググレカス!

ドメインを設定する

メールに記載されている情報からコントロールパネルにログインし、目的のドメインがセットアップされていることを確認します。
次に、マニュアルのDKIM Guideに従って、DKIM情報をコピーしておきます。コンパネ画面に表示されるSPFレコードは使えないので、間違って使わないようにしてください。メールに記載されている方が正しい情報です。

次に、自分が管理しているドメインサービスでMXレコードとSPF、DKIMを設定しておきます。
最近は迷惑メールが急増している影響でSPFとDKIMを設定していないとGoogle宛のメールが拒否される例が出てきているようなので、この二つの設定は強くお勧めです。
MXレコードとSPFはメールの記載を良く読んで設定してください。

メール送信してみる

DNS情報が浸透するのを待って、Mail-Testerにメールを送信してみましょう。
タイトルと本文は適当に普通のメールっぽく書いた方がスコアが低く出なくて済みます。

DKIMやSPFがちゃんと設定されているか、一括して確認することができます。

まとめ

非常に尖ったメールボックスサービス、MXrouteを紹介しました。
決して格安ではありませんが、「ここから送ってスパム認定されたら他でも無理」と言えるのではないかと思うほど、メール送達率にプライドを賭けたメールボックスであると思います。
送達率を上げるだけならSendGridやMailgunも候補に挙がりますが、「送受信にストレスのないメールボックス」を求めている人、管理人のアグレッシブさが好きな人には非常にお勧めのサービスです。

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