医学系論文をアラートで楽して集める (Google Scholar, PubMed, etc.)

次の抄読会、よろしく!

このセリフを恨めしく思う人も多いと思います。
そこからPubMedで数時間かけても、中々良さそうな論文が見つからない。

もちろん論文検索は数をこなせば上達しますが、週1回のアラートチェックをしておけば、抄読会のネタ不足に怯える事が少なくなるかも知れません。

目次

論文アラートとは

論文アラートとは、新しい論文が出た際に自動的に通知してくれる仕組みのことです。
メジャーなものは、メールによる通知と、RSSによる通知、TwitterなどのSNS経由の通知があります。

このページでは、主にメールによる通知をおすすめしています。

なぜアラートはメールがおすすめなのか

まずTwitterなどのSNS経由の通知は、コメントを見られるなどのソーシャル的な利点がありますが、TLの流れが早い人だとすぐ埋もれてしまい、実用性に欠けます。
RSSは速報性の面で最も優れていますが、アプリの登録が必要で、正直言って面倒です。やる気が出ない時にアプリを開かないでいると、そのままお蔵入りする危険性が高いです。
それに対し、メール通知であれば、通知頻度を調整でき、メールチェックのついでに見る事ができるので、自分のペースで続けやすく、継続率がかなり高くなります。

論文アラートの頻度

論文アラートの一番の挫折ポイントは「メール多すぎて読まなくなった」状態です。
こうなってしまうと、中々立ち直れません。
そのため、論文アラートの頻度・量を調節しておく事が最重要となります

個人的なおすすめは、週に1通届く程度です。
意識を高く持って毎日メールが来るようにすると、ほぼ確実に消化不良を起こすので止めましょう。
週1通を守っていると、継続しやすくなります。

初心者おすすめの論文アラート入門

まず、PubMedで興味のあるキーワードで検索します。
検索結果画面の右側に、”Results by Year”が表示されますが、昨年の論文数が500未満になるようにキーワードを調整して下さい。

results by year less than 500
Results by Yearが500未満だとチェックしやすい
rby_toomany
これは多すぎるかも

検索欄の下にある”Create alert”でアラートを作成します。
通知頻度を”weekly”(週1通)に設定して下さい。
その上で、”Number of items”(メール1通あたりの論文数)を”10 items”にします。
登録したら、あとはメールを待つだけ。
慣れてきたら、通知件数が多くなるようにキーワードやitem数を増やしていきます。

使いやすい論文アラートメール一覧

僕が頻用しているサービスのみ掲載しています。

万能型アラート

登録した検索ワードを含む新しい論文を定期的に通知してくれます。

Google Scholar

使いやすさ:★★★★☆
守備範囲:★★★★★
速報性:★★★★☆
論文の質:★★☆☆☆

Google先生の検索エンジンによる論文検索は、守備範囲が広く、キャッチも速いです。
また、検索ワードだけでなく、引用アラート(論文が引用されたら通知)も設定できる万能選手。
使いこなせばこれ一つで十分ですが、超マイナーな雑誌や学位論文なんかも引っ張ってくるので、少しノイズが多めです。

使い方は、このサイトが分かりやすく参考になります。

PubMed (初心者におすすめ)

使いやすさ:★★★★★
守備範囲:★★★★☆
速報性:★★★★★
論文の質:★★★☆☆

こちらも言わずと知れた医学論文の検索サイト。
Google Scholarよりも検索範囲が少し劣りますが、アラートのカスタマイズ性はこちらのほうが上。
通知頻度を「毎月・毎週・毎日」から選択でき、表示件数も選べます。
毎日通知にすればほぼ最速の論文キャッチができますが、慌ただしいので推奨しません。
メールの頻度を調整して、自分のペースで論文チェックできるので、初心者におすすめです。
慣れてくると、カスタム検索なども使いこなして更に便利になります。

使い方は、このサイトがわかりやすく参考になります。

Web of Science

使いやすさ:★★★☆☆
守備範囲:★★☆☆☆
速報性:★★☆☆☆
論文の質:★★★★☆

大学に在籍している人だと、大学の包括契約で使える事が多いサービス。
データソースが主要論文誌に絞られているので、良く分からない論文を掴まされる事が減ります。
その代わりに、検索で出てこない論文があったり、アラートで通知されるまでラグがあったりします。
PubMedの情報量が多いと感じる人は、Web of Scienceの方が扱いやすいかも知れません。

論文数が比較的少ない代わりにハズレが少なめなので、Google Scholarよりもキーワードを少なめにして、興味の幅を広げるのに利用しています。

ジャーナル発信型アラート

論文の発行元が運営しているメールアラートです。
本文有料の雑誌でも、アラートだけは無料で提供している所が多いです。
殆どがHTML形式の見やすいメールを送ってくれるので、読みやすいのがメリットですが、自分の興味がある論文がヒットするとは限りません。
個人的には、ジャーナルのアラートは多くても3-4本に絞った方が長続きしやすいと思います。

自分の好きな雑誌のアラートを登録すれば良いですが、代表的なものをいくつか紹介します。

Nature E-Alert

使いやすさ:★★★☆☆
守備範囲:★☆☆☆☆
速報性:★★☆☆☆
論文の質:★★★★★

言わずと知れたビッグジャーナルのアラートです。
Nature誌だけでなく、傘下のNature Medicineなど姉妹誌全てのアラートが取れます。
同様に、ScienceやCellもアラートを発行しています。

Nature Japan (英語苦手な人の入門編)

使いやすさ:★★★★☆
守備範囲:☆☆☆☆☆
速報性:★☆☆☆☆
論文の質:★★★★★

英語が苦手な場合は、日本語版のアラートを登録するのも手です。
英語版よりもかなり守備範囲が狭く、興味のある分野の論文を探すのにはあまり役立ちませんが、「まず論文アラートを使ってみる」のには良いかも知れません。

おまけ:話題性重視のメールアラート

自分の興味ある分野だけじゃなくて、他に話題性のあるものをチェックしておきたい時におすすめ。

NEJM Journal Watch

使いやすさ:★★☆☆☆
守備範囲:★★☆☆☆
速報性:★★★☆☆
論文の質:★★★★★

NEJMと名前がついていますが、色んな臨床系の論文を解説しているサイトです。
分野が限られているので、自分の専門分野があればラッキー。
アラートの内容が、クリニカルクエスチョン「○○は○○に有効か?」と、その答え「一部有効かも知れないが、バイアスの懸念がある。」で構成されているため、読みやすい。

解説の本文は有料の購読が必要ですが、アラートで興味を持ったら元論文のアブストラクトやEditor’s Commentなどを読みにいく、という使い方をしています。

QLIfePro 医療ニュース

使いやすさ:★★☆☆☆
守備範囲:★★★☆☆
速報性:★★★☆☆
論文の質:★☆☆☆☆

これ系はM3とか色々ありますが、その中でもメールの頻度が控えめで、興味を引く内容が比較的多いのが特徴です。
国内向けのプレスリリースが情報ソースになっているようなので、学術的な信頼性が担保されている訳ではありませんが、ニュースなどで話題になりそうなネタを仕入れておくのに便利です。

論文アラートで得られるもの・得られないもの

「座っているだけで情報が集まってくる」のが論文アラートの良いところです。
時間をかけて雑誌のバックナンバーを渡り歩かなくて良くなるので、慣れるととても楽になります。
ただ、このアラートだけで必要十分な情報が得られているか?良い論文が集まっているか?は、検索条件の設定次第です。

こればかりはトライ&エラーで経験と知識を積んでいくしかなく、時間がかかります。
継続できることを第一に考えて下さい。
くれぐれも無理をせず、週1・10本未満ペースから始めるようにして下さい。
皆様の論文検索に費やす時間が少しでも減れば幸いです。

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